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気楽に行こうぜ みんな同じだ

ペンネーム:くじら

挿画01 学生時代に、初めて海外へ行った時のことです。そこで出会ったすてきな「思いやり」のシーンが忘れられません。

 最初はイギリスでした。ガイドブックの文章を丸暗記して、1人でタクシーに乗り、もちろん英語で「…へ行ってほしい」と告げましたら、タクシーの運転手さんからは「こんばんは。…へ行きたいのですね。承知いたしました。お連れいたします」という意味の言葉が返ってきました。しかも、私に分かるようにゆっくりと話してくれました。初めての海外で、英語をうまく話そうと必死だった私にその運転手さんは「肩の力を抜いて、まずは挨拶しましょうよ」と、暗にそんなことを教えてくれたのだなと思いました。

 次がフランス。ホテルに入ろうとしたら、反対に出ようとしているご婦人がいました。思わずというか、至極当たり前にドアを押さえておりましたら、「パルド〜ン」と何とも言えない良い響きでお礼を言われました。日本語では「失礼しました」にあたる言葉だそうです。生まれて初めて聞いた生のフランス語、レディーファーストが徹底していて、常に女性優先というのが、慣れていない私は緊張を強いられましたが、ご婦人方は「パルド〜ン」と、気軽に返してくれました。

 そしてドイツ。ドイツ語をかじっていた私は、ライン川沿いの土産物店で、必死になって話そうとしていましたら、お店のひげのおじさんから「無理してドイツ語を使うなよ」と、英語で言われました。挿画2そんなにひどいドイツ語だったのかなと、今思い出しても恥ずかしくなります。

 タクシーの運転手さん、ホテルで出会ったご婦人、ライン川沿いのひげのおじさんたちは、話さなきゃ、レディーファーストしなきゃ、と必死になっていた私に、「気楽に行こうぜ。みんな同じだ」と言ってくださったように思います。さりげなく、それでいて何とも粋でカッコイイ思いやりだと思いました。数十年経った今も、その時のシーンが思い出となって、私の心に残っています。

  
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