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『僕の家内は「大黒さま」似』

ペンネーム:のんべえ

挿画01 大学受験を幾度か繰り返し、国家試験にも手間取って、地方の病院でインターン生活に入ったのは30歳の時でした。その頃の私は、今思えば不規則、不健全この上ない暮らしをしていたようです。帰宅時間もあったりなかったり(つまり泊まり込みだったり)、徒歩20分のアパートは、ほとんど寝酒を飲んで寝る場所でした。病院との間にある店は、アパートの大家さんがやっている隣の酒屋だけ。大黒様に似ているその店の、オヤジさんの遠縁の娘さんが、今の私の家内です。

 買い物に出る間もない私は、いつしかオヤジさんに缶詰やインスタント食品やビールや芋焼酎を留守の間に部屋まで届けてもらっていました。私の暮らしぶりは注文の品や部屋の様子から一目瞭然だったのでしょう。たまに顔を会わせると「ちゃんとご飯を食べんといけんよ」「空腹で飲んだらいけんよ」などと心配してくれるのですが、相変わらずかなりの量のアルコールを購入していました。

 そんな私をよほど見るに見かねたのでしょう。1年ほどたった4月のある朝、オヤジさんは訪ねてきて「あんた、こんな生活しとったら死んでしまう。悪いことは言わんから奥さんをもらってしっかりご飯を作ってもらいんさい。人間らしゅう暮らさんといけん。この人は栄養士じゃから間違いない」と言って、私はいきなり見合い写真を手渡されました。オヤジさんなりに、私の健康のことを心配した上で、いろいろ考えて出した結論が「所帯を持つ」ことだったようです。

 「参ったなぁ」と思う半面、仕事仕事でこのままでは出会いのチャンスすらないかもしれないと思い始めていた私に、写真の中の和服の女性は、実に、優しく、和やかに、微笑んでくれていました。

 ごく普通の、どこかオヤジさんに似た面持ちの写真の女性を、どうしてその時「いいなぁ」と思ったのか自分でも不思議ですが、今は彼女がしっかりと栄養バランスを考えてカロリー計算をして作ってくれたおいしいご飯を食べて、双子の息子ともども元気で、日々仕事に励んでおります。

  
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