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コミュニケーション

『素直にのる』

ペンネーム : うなぎいぬ

  結婚して5年、その気はあるのに子供が授からなかった。

 あちこちの友だちに子供ができたと聞くと、涙が出てきた。

 思い切って夫婦で不妊治療に通い、全部調べてもらったものの異常はなく、医師からは人工授精を勧められた。そんな時に、尊敬する知人とバッタリ出会い、子供ができないないことを自然と相談することができた。知人は、最後に「タイミングだよね」と言ってくださった。私はなぜか、スッとして、“あぁ、もう子供子供と考えるのはやめよう。夫婦二人で仲良く暮らしていこう!”と思えた。

 うそのような話かも知れないが、その後、気が付いたらかっぱ巻きが無性に食べたくなっていた。翌月には子供を授かった。とっても、とってもありがたく、タイミングとは自分ではなかなか押し測れないものだ、と痛感した。子供は正に授かるものだ、と強く思った。

 母となった今、あの時の「タイミングだよね」の言葉が事あるごとによみがえり、明日と言わず今日!後からと言わず今!と、気が付いた時にそのことに感謝して、素直に動く努力をしている。善い事も悪い事も、すべてタイミングだから……

 


『運にも恵まれて……』

ペンネーム : モモ

 大学受験のころ、ある受験講座に参加してみた。最初に講師が「合格するために必要なことが二つあります。それは何か分かりますか?」と皆に問いかけた。『学力は当然必要だろう』と思ったら正解で、「一つ目は実力です。ではもう一つは?」と問われて、まさかの答えは「運です」。一瞬、『なんだそりゃ』と思ったが、そこにはちゃんとした深い意味があった。

 〈運〉と言ってもそれは単なる〈偶然〉ではない。「運はその人の持つ人徳の量に関係していて、人徳のある人は運が良くなる。そして人徳は周囲のために努力することで自分に備わっていく…」。

——例えば、いつも時間に遅れて人を待たせていると、時間に対しての徳を失う。肝心な時に不可抗力的なことが起こって、時間に間に合わなくなるような羽目に陥る。逆に、いつも少し早めに出掛けて何か手伝うとか、遅れそうな人がいたら誘ってあげるとかしていると、時間に対しての徳が身につき、タイミングの良い人生になる——

 講座全体の結論としては、勉強(=自分のための努力)も、家の手伝いなど(=他人のための努力)も、どちらも頑張ることが合格への近道だということだった。自分のことだけを考えていてはいけないということ、また「時間を大切に扱う」ことの大切さが心に残った。

 そうしたことを心掛け、自分だけでなく「同級生全員が合格しますよう」と願って、奉仕作業にも進んで取り組みながらの受験生活。いよいよ最後となる国立大学受験の前日、タイミングに恵まれ、心から敬愛するお方にお会いすることができた。激励のお言葉まで頂くという夢のような展開に、モチベーションも最高な状態で本番に突入した。2日間の試験は心身共に絶好調で、楽しくてあっという間に終わった。合格させていただいたこともうれしかったけれど、肝心の本番で力を出し切ることができたことが幸せで、タイミングの良い出会いに恵まれたことを心から感謝した。

 


『生まれてくるもの?』

ペンネーム : 美猿

 ある時、仕事や町内会でのお役やプライベートの行事が立て込んでしまい、あれもこれもできていない!と焦る心が出てきました。そこで、われに返って心を落ち着かせ、気が付いたことから手を打とうと心を切り替えると、用事もスムーズに進み、楽しくなってきました。ただ一つ、町内会のことで、お一人だけ連絡がつかない方のことが気になっていました。

 そのご婦人は高齢で病院に入院しておられましたが、最近やっと退院なさったらしいと聞いていました。お宅のチャイムを鳴らしても出てこられませんし、玄関の戸が開いていたので声を掛けてもお返事がありませんでした。メモに私の電話番号と用件を書いて玄関に置いて帰りましたが、電話もかかってきません。お体がまだ本調子ではないことが察せられて、こちらから何度も電話をすることもはばかられ、どうしたものかと考えあぐねていました。

 ある休日、夫が仕事に出掛けていたので、私は家事の合間にある会合の出欠をパソコンで集計していました。一通り入力が終わった頃、「昨日は返信はがきの必着日だったから、届いているかもしれない」とふと気付き、郵便受けをのぞこうとさっと立ち上がりました。そして玄関を出たちょうどその時、そのご婦人が家の中に入って行かれる後ろ姿が見えました。「今だ!」と思ってお宅を訪ねると、すぐに玄関まで出てきてくださいました。その日はお加減がよかったのか、入院中や退院後のことなど、近況をお伺いすることができ、「お困りのことがあれば、お手伝いさせていただきます」と申し添え、大事な書類のお話もさせていただくことができたのでした。

 気付いたことをすぐすると、雑念が湧かずに心楽しく過ごせるばかりか、用事をするのにちょうどよいタイミングにも恵まれるのだということが分かりました。もしかすると、タイミングとは、空から降ってくるものではなく、緊張感のある生活の中から生まれてくるものなのかもしれない、と思ったことでした。

 


『ハイ!よろこんで』

ペンネーム : 鉢かつぎ

 “人生はタイミング”、こちらから迎えに行くつもりでいると、物事がはかどるようです。できれば積極的に喜んで。とはいえ、いつもは自分の都合を優先してしまいがち。自分を横に置いて、ほんの少し、相手の都合を迎え入れる気持ちを持つだけで、相手も自分もうれしい展開になっていくものです。

 昼休み、職場でお弁当のふたを開け、ふた口目をお箸で運ぼうとした時、不意に用事を頼まれる。直接手渡しで重要書類を届けなければならない。すぐに箸を置き、100メートルほど離れた別館へ。実はその時、頭の中では午後からやる予定の仕事や他の煩雑な用事のことを、あれこれ思い巡らしながらお弁当を広げていた。いつもなら「えっ、このタイミングで?!」と、不服に思い「午後からでいいか」と自分に妥協するところだが、今日はスタートダッシュに大成功。すると、びっくりするほど良いタイミングに恵まれる。別館入口から最初のコーナーを曲がったところで届け先の本人とバッタリ出会う。聞くと、午後から出張だという。早々とミッション完了。戻ろうとすると別の人に呼び止められ、向こうに戻るなら通信物と荷物を渡してほしいと頼まれた。早く持っていかなきゃと気にしていたらしい。「ちょうどよかった、助かった」と言われて、ちょっとうれしくなった。

 良い時も良くない時もあるけれど、こんな“タイミングの妙”を満喫する日々を歩んでいきたいものです。“人生はタイミング”ですから。