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心温まるエピソード
引き算の優しさ 

挿画  見積書の数字を間違えて、上司に目から火が出るほど叱られてしまったサチコ。いつもは 明るいサチコもさすがにヘコんでいます。

「気にしないくていいわよ」
「あんたの上司は短気ですぐ怒るからね」
「先方にはちゃんと訂正したのを提出したんだから、いつまでもくよくよしないのよ」
「大丈夫よ。こうやって失敗を繰り返して、みんな成長していくんだから」

 同僚や先輩が近づいてきては、優しく慰めてくれます。でもサチコはうれしい反面、その優しさが少し負担にもなっています。

 ちょうどお昼になったので、いつもなら誰かと食事に行くところを、サチコは一人になりたくて近くの公園に出かけます。
 人口池のそばのベンチに座っていると、いつの間にか同期のアサミが隣にいます。せっかく一人になりたかったのに、アサミにも励まされちゃうのかなあ。

「ねえ、サチコ。この池、ワニが出たのよ」
「ええっ、こんな所にぃ」
「出るわけないじゃん。あんたも人の言ったことすぐ信じちゃうのね」
「いやだぁ、ウソなんだ」
「じゃあね」。そう言ってアサミはあっさり立ち去って行きます。

 結局、アサミは何だったんだろう。そんなことを思いながら午後の職場に戻ると、昼までの沈んだ気分はどこへやら、すっかり明るさを取り戻している自分に気がつくサチコ。
アサミのおかげだったんだ。彼女、元気づけることも励ますこともしなかったけれど、何もしない優しさだったんだわ。