『世界をめざして』
そばを通り過ぎようとした時「お客さんが来たので、お茶入れて」と課長の声。“え~私のこの荷物見て分からないんだろうか?”とムカッと頭に来て、もう少しで声に出すところだった。雑誌社に入って私は雑用ばかりの日々! その日も先輩に頼まれた書類を手にいっぱい持っていた。いつかみんなに喜んでもらえるファッション雑誌をこの手で作るんだ! と入社したのだから……とこの時も、書類を課長の机の上にドンッと置いてしぶしぶお茶をいれた。
先日もやっと原稿の清書をさせてもらった時、何度も何度も変更があり、すぐに切り替えができず、腹が立って、しまいにはその場から逃げ出したくなった。 ある時、仕事が重なった上に飛び込みの仕事があり、“そんなに一度にできますか~!”という気持ちになって、頼みに来た先輩に対して「ムリです!」と言ってしまった。すると、先輩はあっさりと「じゃあ、違う人にやってもらうわ」と……。チーン! あまりのあっさりさに悲しくなり“私じゃなくても替わりがいるんだ~!”と、しばし落ち込んだが、勝気な私は“いやいや私を使ってください!”と謝りに行った。
それから、仕事が重なっても、追加や変更があっても、飛び込みの仕事を頼まれても、進んで快く受けるようにした。時間が制限されたときは、「今、急ぎの要件があるので その後でもよろしいでしょうか?」と、はっきり表現して尋ねるようにしたら仕事が楽しくできるようになった。
私の夢は、世界中の人に感動してもらえるようなファッション雑誌を出版すること!
資料を運ぶのをちょっとやめて、湯茶室に走る時…… 慣性に流されず、予定外の仕事に興味を持って向かう時…… どんなさ細なことでも、喜んで!楽しんで! 挑戦していくことが、いつかきっと世界中の人達に喜んでもらえる雑誌を出版することにつながるのではないかと思い直した私は、新しい人生の始まりを予感できるのだった。