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『流れに沿って』

ペンネーム: L u n g o

「We can!」「I can!」

新型コロナウイルスに打ち勝つためのワクチン接種をよびかけるコマーシャルが、今日も盛んに流れている。

私が居住しているアメリカでは大規模なワクチン接種が進む中、まだまだワクチン反対派の人も多い。そんな中、いよいよ自分にも順番が回ってきた。

猛スピードで承認された新しいワクチン。アジア人の私が打っても大丈夫なのか。慎重派の私は、ワクチンの副反応のことを考えるともう少し様子を見てから……などと、やや消極的になっていた。 しかし、友人のタカコはコロナウイルスが怖くて、一年間ほとんど外出していない。マスクをして他人と会話することも控えていた。そんな彼女は、「コロナにかかりたくない」と、いち早くワクチン接種を終えていた。

世界中に広がっているコロナに対して、人類が打ち勝つために必要なワクチン。 先のことはわからないけど、接種することで感染を防ぐばかりか、周りの人の感染を守り、周囲の方々にも安心していただける。 そう思うと、心が決まった。

「誰かのために」という思いは神様が応援してくださると聞いたことがある。 周りの人々のため、素直に世の中の流れに沿っていくことが、今の私にできること。副反応はあったけど、晴れ晴れした気持ちで注射を打つことができた。

一日も早く、世界中の人が安心して過ごせる日が訪れますように。

 


『心に寄り添ってみる』

ペンネーム:ぽっぷ

1機しかないATMに並んでいた時のこと。
私の前にいた若いお母さんは、
子育て中ならではの大きな荷物とベビーカーを支えながら、
足元では1~2歳の子供がくっついたり離れたり。
ATMを操作しながらも子供の動きがとても気になっているようでした。

(ベビーカー支えてあげたいな)

(子供の相手をしててあげようか)     

そんなことをふっと思ったのですが、今はコロナ禍。
触れる、ということに躊躇してしまいました。
自分はともかく、触れられる側にしてみればきっといい気はしないと思ったのです。
ATMで順番を待つ人が増えてくると、そのお母さんの動きにだんだんと焦りが出てきたように感じました。


 

「早くして」「まだ?」という声が聞こえるわけではないのですが、
マスクをつけるのが当たり前になった現在、皆さんの表情は見えづらくなりました。 ATMを操作している若いお母さんは、そんな雰囲気を過敏に感じ取っておられたかもしれません。

マスクの下に笑顔を添えて、そのお母さんに向かってささやいてみました。


「焦らなくて大丈夫ですよ」


そのお母さんが返してくれた会釈から、“心に寄り添う”ことができたんだな、と感じました。
ほんの少しの寄り添う心、それだけで平和が広がっていくような気がしました。

コロナ禍だからこそ、少しでも安心して日々を過ごせたら……。 家族も、仲間も、町の人も、遠い国の世界中の人も。

さぁ、今度はどんな寄り添いができるかな。

 


『受け止めてあげられたら次々と』

ペンネーム:モモ

数学の教師になって4年目。中学で新しいクラスを担当した。 授業も回数を重ねるにつれ、生徒さんの初対面の緊張感はだんだんと薄れてきた。 しかし午後の数学の授業というのは、あまり計算が好きでない生徒さんにとっては、眠気との闘いとなる。

少し居眠りが目立ってきた頃、生徒さんの様子を見ると、暑そうにしていた。 『そうだよな…暑いと頭もボーッとするよな』 そこで百均で、手回し式の可愛い扇風機を買ってきた。 睡魔に負けた生徒さんを優しく起こし、「おーい、頑張れ~」と扇風機で風を当ててあげる。 風を当てられた方は、フフッと苦笑して……。 ただ起こすよりもなかなかいい感じではある。


数学が苦手な生徒さんは黒板を使っての説明をあまり理解できていないようだ。 聞き方が散漫というか、心が集中しきれていない感じ。 そこで今度は、小さなホワイトボードを買ってきた。 全員に問題を解かせている時など、解答に立ち向かっている生徒さんたちはよしとして、行き詰っている生徒さんには机まで寄って行ってその小さなホワイトボードを使って説明する。 1対1で説明すると、割と理解できるみたい。 こうしていろいろ思い付いてやってみると、なんだか楽しくなる。


最近、「面倒くさい」「やりたくない」というツブヤキを聞いた。 そっかぁ。計算が面倒くさいんだね。そりゃあやりたくないよね……。 小学生の頃から、すでに計算は嫌いだったんだろうな。 何の抵抗もなく、問題にどんどん取り組める人もいるけれど、計算が面倒くさい人には、きっとキツイんだろうね……。 なんとかしてあげたい。少しでも、「できる」感じを味わわせてあげたいと思うけれど、まあしかし、何年も前からの状況がそんなに簡単に解決するわけもないか……。 あせらずに、ほんの少しずつ、一つ一つ授かりながら進んでいけたら良いのでは? ふと、そう気付いたら、少し心が楽になった気がする……。 祈り心をもって温かい心を添わせ、生徒たちと一緒に乗り越えていけたらありがたいと思う。

 


『新しい日に再起動』

ペンネーム:鉢かつぎ

今回の新型コロナでの自宅待機は長かった。 職場へ向かう時、いつも足早に通り過ぎていた空地の景色が一変していた。シロツメ草の花が一斉に咲いていたのだ。


まるで一晩のうちに、地面から湧き上がって咲いたかのように目に映った。 うやうやしく重なり合った無数の葉に守られて、育まれていたシロツメ草の花の群れ。空に向かってすっくと立ち上がり、「おはよう」と大合唱で挨拶をしてくれているようだった。マスクの下で少しだけ笑みがこぼれた。家を出た時より気持ち足取りが軽くなっている。


前からずっとここに生えていたのに気付いていなかった。 自宅と職場を往復するだけで、季節の移り変わりを感じる余裕すらなく、日々変化し続けている世界や自分自身の気持ちにも気付けなくなっていた。去年も咲いていたはずなのに、ずっとここに隠れていただろう四つ葉も、何も見えていなかった。

出勤後一番にパソコンを立ち上げる。聞き慣れた起動音が響き、自分も一緒に更新されたような気分になる。パーティションの向こう側から、同僚がひょっこり顔を出して手を振ったので、こちらも両手を振って「おはよう」と久しぶりに挨拶を交した。


いつも元気で絶好調とはいかなくても、気の持ち方一つで新しい自分に更新可能。今日という日に心楽しく参加すれば、いつでも再起動できるものなのだろう。自分次第で、見えなかった四つ葉のクローバーだって見つかるかもしれない。