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コミュニケーション

『故郷のおもてなし』

ペンネーム:スイトピー

 亡き義父の故郷には、3人の叔父の家族が住んでいた。結婚してすぐに挨拶に伺った際は、3軒の叔父家族みんながそろって歓待してくださり、感動してしまった。その時以来なかなか訪れる機会がなくご無沙汰していたが、昨年二人の叔父が亡くなられたこともあり、お墓参りを兼ねて、25年ぶりに夫婦でお邪魔することにした。

 お墓参りをしたあと、施設に入っているA子叔母さんを訪ねると、とても喜ばれた。「よく来た、よく来た」と抱擁され、おいとまする時には施設の玄関まで出て見送ってくださった。その夜には叔父や叔母、従兄弟たちが集まっての会食があった。懐かしい話をたくさん聞かせてもらい、楽しいひとときを過ごした。翌日には、叔父夫婦ともう一人の叔母の三人の案内で、渓谷観光に出掛けた。朝4時起きして5人分の弁当を作ったり、おやつや飲み物を準備してくださったり、切符の手配までしてくださったのが二人の叔母さんたち。車を運転し、カメラマンを買って出てくださったのが叔父さん。それぞれが以前と変わらない優しさを持って、心一つになって私たちを歓待してくださり、本当に心が温かくなる旅となった。

 なんとお礼を言っていいか分からないほどお世話になった上、帰宅後には旅の思い出アルバムに「よく来てくださった」と感謝の一筆箋が添えられて、叔父夫婦から送られてきた。

 我が家でもお客様を接待することがあって、いつも夫とともに張り切って準備する。が、後になってもっとこうすればよかったと後悔することがある。故郷の叔父や叔母を見習って、もっとステキな『おもてなし』ができるよう、「我が家にきてくれて本当にありがとう」の気持ちを形に表していけたらいいなと思っている。がんばろうっと!。

 


『これ、いただいてもいいですか?』

ペンネーム : つぐみ

 子供が幼稚園に通っていた時のこと。ママ友のつながりも広がって、家族ぐるみでお付き合いをするようになったある日、皆さんを我が家にご招待してランチを囲んだ。食事の途中、主人に「飲み物のおかわりは何を召し上がりますか?」と聞く私に、ママ友たちは一斉に驚いた。

「普通、何飲む~?でしょう?。ふだんから旦那にそんな言葉でしゃべっているの??」と驚かれてしまった。

 また別の日のこと。 「ママ~!これ、いただいてもいいですか~?」 と、満面の笑みで冷蔵庫の中のプリンを差し出す息子に、 「どうぞ召し上がれ~!」と私。 いつもと変わらぬ親子の会話だったが、たまたま居合わせた友だちが驚いた。

「子供といつもそんな丁寧な言い方で話しているの??」

 一度ならず二度三度……とママ友たちに驚かれてしまったので、私の言葉ってそんなにおかしいのかなぁ~とだんだん自信喪失気味のある日のこと。ママ友の一人が、はにかみながら声を掛けてくれた。

「実はね、あれからあなたを見習って、私も夫に丁寧な言葉遣いを心掛けるようにしてみたのよ。そしたら夫が大変身!びっくりするくらい優しくなっちゃったのよ~。あなたからはとってもすてきなおもてなしを頂いたわ。ありがとう」と、身に余るうれしい言葉を頂いた。

 極上のおもてなしは、日常の何気ない言葉遣いから生まれるのかもしれない、と感じたことだった。

 


『世界人類みな兄弟姉妹』

ペンネーム : うなぎいぬ

 友人は、いつも一人でさまざまな国を旅しています。毎回、帰国後のおみやげ話が楽しみです。先日も「おかえり!」と彼女の帰国を喜びつつも「女の一人旅って危なくないの?今まで何もない方が不思議じゃない?」と聞いてみました。すると、「旅行者に対して親切な国がとても多いんだよ」と彼女は言ったのです。   

 例えば、街角で地図を広げて迷っていると、すぐに声をかけてきてバスや電車の乗り場を教えてくれたり、ある時はレストランで英語が通じなくて困っていると、隣のテーブルにいた人が、「私、英語できます」とサッと間に入ってくれたの。そして、みんな口々に「自分の国に来てくれた外国人に親切にするのは当然です」って言うんだよ。これこそ、おもてなしの精神だと思わない?!ありがたくて、いつも感動するよ。最初、あまりの親切な態度に、本当に信じていいのかと疑ってしまった自分が恥ずかしくなった。すれ違う時に、荷物や体が少しでもぶつかったら「すみません、大丈夫?」と声を掛け合うし、後ろの人が通りやすいようにドアを手で押さえておいてくれるなど、ちょっとしたことでも、本当にありがたい……。

 この友人は恵まれすぎてないか?一人旅で何もない方が不思議ではないか?と思うこともありますが、考えてみれば彼女自身も困ってる人を黙って見ていることができない人です。何かあったらすぐに声を掛けて、自分でできることはすぐしてあげているから、彼女もしてもらえる。日常の生活の中で認め合い、尊重し合うことが当たり前にできているからこそ、彼女も尊重されているのだなあと思いました。

 私は、まずお困りの様子の方に声を掛けることから取り組んでみようと思います。

 


『パワースポットのある町にて』

ペンネーム : 美猿

 夫の兄妹三夫婦が久しぶりに故郷に集まりました。タクシーを2台呼んで、父とともに町中まで食事に出かけたのですが、その夜はお目当ての焼肉屋さんが貸し切りになっていました。私たちが困っていると、なんて親切なのでしょう、タクシーの運転手さん二人が、携帯でいくつかの店をあたってくださったのです。そして、4軒目でようやく見つかったところが町で人気の居酒屋さんだったのですが、その店に予約までしてタクシーを走らせてくださいました。おかげで家族みんなで楽しいひとときを過ごすことができました。

 山間の小さな田舎町は、パワースポットがあるということで取り上げられて久しく、帰省のたびに道路や駐車場の整備も進んでいます。そんな中で何より心が癒やされたのは、その町のタクシーの運転手さんの親切でした。「人が人のためを思う気持ちは、パワースポットにも勝る癒やしを生み出せる」、夫の故郷が私にそう教えてくれました。

 故郷から戻り、ほどなくして、友人の就職をお祝いするささやかな夕食会を我が家で開くことになりました。私は、あの運転手さんの親切を思い浮かべながら、いつにも増してお料理に心を籠め、友人のお子さんのための飲み物やお菓子も準備しました。主賓の友人からはお料理がおいしかったとお礼の言葉を頂き、お招きした他のお客様からも喜んでいただきました。

 会もお開きとなり、私が食器を洗っている間に夫がテーブルなどを片付けてくれました。そして、しみじみと「いつもこうやって準備してくれているんだなあ」と、普段はあまり口にすることのないやさしい言葉で私をねぎらってくれました。夫もいい気分だったのだと思われて、私もうれしくなりました。