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コミュニケーション

腹を決めてとりかかる姿に感謝

ペンネーム : モモ

「あのぉ、サインを決めたいんですけど」「ええっ?」

 妻の唐突な話には、訳があった。私は難聴で補聴器を付けている。妻とは一緒に働いているので、密接な打ち合わせは欠かせない。しかし、

——何か話がある時に普通の声で言っても聞こえないので、少し大きな声で私を呼ばないといけない。するとつい『まあ、そこまでして言わなくても……』となってしまって、だんだんと言いたいことが溜まってしまう——

という悩みが、妻にはあった。人に相談してみると、「話がある時のサインを決めてみたら」とアドバイスされた。一瞬『そんなことを』と思ったけれど『いや、素直にやってみよう』と思い直して、私に話を持ちかけてきたという次第。

 しかし、言われた私は、野球などの監督からのサインのように、合図されるのはおもしろくない気がして、「サインよりもそばまで来て手を握ってくれた方がいいなぁ」と言ってみた。またまた妻は『そんなことを』と思ったらしいけれど、『いや待て待て』と今度も思い直し、やってみようと腹を決めてくれた。

 すると不思議。『あ、これを伝えておかなきゃ』と思いついた時に、ちょうど私がそばを通りかかるようになり、コミュニケーションがスムーズに取れるようになった。(私は結局、妻に手を握ってもらい損ねた)

 妻の腹の決め方はなかなかのもので、結婚の時も「一生、この人の耳になろう」と思ってくれたとのこと。人より苦労をかけていることを思い、努力してくれていることに改めて感謝した。

 


普通はしないだろ?

ペンネーム : くじら

 私の家内は、結婚する前からちょっとヘンでした。お見合いで初めて会って、田舎の美術館に行った時、アンティークの椅子の前にロープが張ってあるにもかかわらず、ロープの横からスッと入って椅子に座って喜んでみたり、高級レストランで席への案内を待っている時、目の前にあった棚の扉を片っ端から開けてみたり。「普通はしないだろ?」という行動をとったのです。

 さて、この人と結婚を前提にお付き合いすべきかどうか?ただ一点、このおかしな行動が引っかかっていました。先輩に経緯などをいろいろ話して「良い人だとは思うのですが、普通はしないことをしてしまうところが気になるんですよね」と相談すると「普通はしないことをする、という考え方もできるけど、何をしでかすか分からない、こりゃ大ものだ、とも思えるよね」と言われました。大もの?!、そんな考えが微塵もなかった私は、そう言われればそうだなと妙に納得。相手は変わらないのに、自分の見方、考え方を変えれば、普通しないことをする人、私にすれば「ちょっとどうですかぁと思える人」が、「大もの」になってしまうこともあるんだということを学んだのです。

 結婚して二十数年、彼女の大もの?!ぶりを今も楽しく感じながら、そしてあの時の先輩の一言に感謝しながら、毎日楽しく結婚生活を送っています。

 


いのししさんとの出会い

ペンネーム : うなぎいぬ

 結婚を意識し始めたころは、よくけんかしていた両親を見ていたせいか、「結婚しないで子供だけ欲しい!」と思っていた。

 いろいろあったが、私はあこがれの弁護士になった。所属した事務所は上司と上司の奥さんと私の3人。その上司の奥さんがとてもすばらしい人だった。飾らない人柄で、上司(ご主人)をとても大事にしつつ、自分の意見もしっかり表現しておられ、会話の絶えない明るいご夫婦だった。結婚なんて!と思っていた私が、自然と「こんな結婚がしたい。上司の奥さんのようなお嫁さんになりたい!」と、夢を抱くようになっていった。さらに、弁護士の奥さんになって、共働きができたら……とも思うようになっていった。本気でそう思っていた。両親に相談したら「不器用なあなたにつとまるわけがない!」と一喝された。それでもあこがれて、あこがれて、ぜひにと思う私。

 周囲の方たちは、そんな私にお見合い話を持ってきてくれた。先輩から紹介された人の写真をチラッと見たら「いのししみたいな顔!」。その後なぜか話が進まず、二人目を上司から紹介された。名前を聞いたら、なんとあのいのししさん。へぇ、おもしろいものだと思ったが、これまた話は進まず……。三人目、地元の事務所に移った私に、そこの上司の奥さんから紹介されたのは、あれあれ、またあのいのししさん。私はいつしか、このいのししさんとお会いしたい、いのししさんと結婚するのだろうな……と思い始めた。初めてご本人にお会いするととっても誠実で、前から知っていたかのように自然体で一緒に居られる私がいた。

 お見合いなんて……と言われるかもしれないが、いろいろな出会い方があると思う!100人いたら100通り!その中にその人に合った出会いがあると思う。その出会った瞬間を一生温めながら、幸せになっていくのもいいのではと実感している。

 


『自分から心添わせて』

ペンネーム : スイートピー

 私が結婚する1年前に義父は亡くなっていたのだが、義父母は何をするにも一緒の、仲の良い夫婦だったようだ。「結婚生活25年の間に一度も主人と別れたいと思ったことがなかったのよ」と、義父との幸せな日々を懐かしむように、義母はうれしそうに話してくれた。年上の二人の知り合いにこの話をしたら、声をそろえて「別れたいと思ったことがないなんて信じられない!」と叫んだので、そういう結婚生活は珍しいことなのかなと、まだ若かった私は思った。

 我が家の場合、夫婦げんかをしたり、夫に文句を言いたくなったりすると、ふと義父母がとても仲が良かったことが頭をよぎって、がんばらなくっちゃと自分を励ましてくれる。だからけんかしても必ず私から先に「ごめんなさい」と言う。すると、夫は待ってましたとばかりに「うん」とうれしそうに応える。

 結婚生活は夫婦二人で築くものだから、自分のためというより、相手のためという思いがあれば、温かな家庭になる。一番小さな社会の一単位である幸せな結婚は、社会が幸せになり、世界平和へとつながっていく。だめなところがいっぱいある私と結婚してくれた夫に感謝して、自分から夫に心を添わせていく。心配したり腹が立ったり、いろんなことがあるけれど、感謝を忘れず心を添わせていたら、幸せな気分も味わえる。何よりも夫婦仲良しなのが、家庭ではいいことずくめの元になる、と先輩も教えてくれたっけ。

 そうだ、今夜は、夫の好きなかき揚げと日本酒にしようっと。