HOME
コミュニケーション

ぼくのキャッチボール修行

ペンネーム : 鉢かつぎ

学校から帰って来て「ただいまぁ、疲れた」と、玄関からいつものあいさつを投げ入れる。「おかえり」の代わりに「お疲れ〜」と返ってくる。「今日、マジ に疲れた」と言うと「お母さんも疲れた」と、速攻で投げ返される。ぼくが疲れている訳など聞くほど暇じゃないと言いたいらしい。こ っちもしゃべるのが面倒だから黙っていると、この機を逃すまいと母は一気にしゃべり出す。こんな時「オカン元気で無口がいい」と、つくづく思う。母親って、善意の心配と過干渉が子供に対する有力なコミュニケーションだと思い込んでいるようだ。

よく会話はキャッチボールに例えられるけど、ぼくの家族の場合は一方通行の自己満足アピールで終わってしまう。お互いの会話の目的は、自分を「分かってもらう」ためのものでもある。相手の言葉を受け止めて 、相手を「分かってあげる」だけの余裕がない。キャッチボールが全然続かない、不器用家族なのだ。言葉のコミュニケーションは空気を読むより難しい。でも、だから面白いのかもしれない。どんな相手とでもキャッチボールができるぐらいうまかったら、それだけで楽しいに違いない。

最近、帰宅の遅い母が「ただいまぁ、めっちゃ疲れた」と、飽きもせずにキャッチボールを挑んでくるので、ぼくが「お疲れ〜、めっちゃ腹減った」と、速攻で応えている。へたの横好き同士、キャッチボールエクササイズの始まりだ。

 


気持ちを添える

ペンネーム : ストロベリー

 夫の眼鏡ケースが壊れていたのを思い出し、気を利かせて新しいものを購入したのですが、「相談してから買ってほしかった」とご機嫌 斜め。もともと、私がこの眼鏡ケース のデザインを気に入って買った のですが、どうやら夫にも愛着があ ったようで す。いつもは「せっかく買ってきたのに」とふくれて黙り込んでしまう私で したが、翌朝 もう一度、なぜ買おうと思ったのか を伝えてみました。「あなたがその眼鏡ケースを気に入ってくださっているのはうれしいわ。でも、あなたは会社の代表だから、私は持ち物にも気を配っておきたいの 」。

 その日、市役所での会合 後 に帰宅した夫 が、「自分は会社の代表なんだ と思うと、 壊れた眼鏡ケースを机の上に出すのを恥ずかしく思った」と話してくれました。そこに気 付いてほしかった私は、気持ちを伝えてよかったと思いました。

 「壊れているのが気になるので買い替えましょうか」「これが気に入っているんだよ」。お互いのこの一言があれば、事はもっと和やかに運んだことでしょう。相手のためを思う行為にも、言葉にして気持ちを添えるとなお温かさが伝わるようです。忙しい日常でつい用件のみの会話となりがちですが、気持ちを添えることで相手を尊び、自分の心をも大切にすることになるの だと思いました。


女将さんの一言で

ペンネーム : くじら

近所においしい料理屋さんがあり、路地裏に入った隠れ家的な場所にもかかわらず、お昼近くになるとお客さんでいっぱいになっている。毎朝、玄関の掃 除をしていると、そこの女将(おかみ)さんが「おはよう!まーちゃん。今日もいい天気ね。お庭のお花もきれいに咲いてすてきね」と、優しい一言を添えて挨 拶してくださり、いつも元気をもらっている。

ある冬の朝、窓を開けると外は一面銀世界! 雪国に嫁いできた私にとっては初めての体験。スコップを持ち、初雪かき開始!! 玄関の雪かきをし、庭 から道路まで、それから少しでも女将さんのお手伝いになればと、お店に向かって雪かきを始めた。しばらくすると、「まーちゃん、おはよう!あなた、もう2 時間も雪かきしてるわよ。腰を壊すから、もうやめなさいよ〜」とお店から女将さんの声。私は「え〜!もうそんなに時間がたってたんですね! 夢中になって 気が付きませんでした」と 応えて、道路に残る雪はそのままにして雪かきを終えた。

女将さんはお店の中を掃除しながら、いつまでも雪かきをしている私の姿を見るに見かねて声を掛けてくださったのだ。女将さんのお手伝いどころか、心 配をかけてしまったかなと思いつつも、夢中になって雪かきをしている私を気遣ってやんわりと掛けてくださった優しい言葉が、うれしくて、私の心がほっこり とした。

女将さんと挨拶をすると、どんな時も笑顔になり、話が弾み、心が豊かになる。いつもそばにいたくなる。また会いたくもなる。だから、女将さんのいるお店はいつもお客さんでいっぱいなんだ……、と理解できた。

翌朝、女将さんが「まーちゃん、おはよう。昨日は道路まで雪かきしてくれて助かったわ。若いっていいわね。まーちゃんと一緒にいるとこちらまで若くなった気がして、何でも頑張れそうでうれしいわ。年齢はそんなに変わらないのにね!」

いつも元気をもらうだけで、何もできない私だとばかり思っていたので女将さんのその一言はとてもうれしかった。私の若さが女将さんを元気にできるな んて、そんなことならいつでもご一緒しますよ!と思いつつ、また今日も私は私で、女将さんと交わす挨拶の瞬間に元気をもらっている……。


挨拶(あいさつ)ノススメ

ペンネーム : くじら

 空き巣被害の少ない町に共通していること は、 町内で挨拶(あいさつ)がよく交わされていることだそうです。今から他人の家に忍び込もうとしている人に「こんにちは」と挨拶すれば、その 人の気持ちを変えさせる 効果があるのだとか。あなたを誰かが見てい ますよ、という 意 味での抑止効果にもなるそうです。 なぜ人は挨拶をするのでしょうか? それは相手に対して「私はあなたの存在を認めていますよ」というシグナルを送るためだとも言われています。そして「必要があればご一緒に何かをいたしま しょう」という意志の表明でもあるのです。人間は一人だけで生きているはずもなく、いろいろな人の協力があってこそ、今を生きていけます。
 挨拶はいろいろな人とのつながりを持つための第一歩。今まで挨拶していなかった人に挨拶するのは勇気が 要りますが、ちょっと勇気を出して自分から挨拶してみませんか。きっと、 爽やかな楽しい気分で 一日を過ごせることでしょう。