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愛はコミュニケーション

『良いと信じて力んでみても…』

ペンネーム : モモ

 長女が小学校5年生、長男が2年生のころ、街頭での募金活動に参加する機会があった。その数年前まで私はこの活動の代表者だったので、参加する以上はみんなに「楽しかった」と充実感を感じてもらいたいと思った。それで、わが子たちには積極的に声を出して盛り上げて欲しいと、内心で願っていた。ところが…。

 私のグループには長男もいたが、子供たちは最初からモチベーションが上がらない。がんばって声を出すのは大人ばかり。そのうち私の前で募金箱を持って立っている長男が、聞いてきた。「あとどれくらい?」「あと1時間!」(始まって5分もたたないうちに何を聞いてくるんじゃ)長男は肩を落とし、大きなため息をついている。

 『親ががんばっていればそのうち伝わるかも』と、長男の背後から声を出し続けるが、みんなのやる気はまったく上がらず、何も打つ手がないまま時間だけが過ぎていく。写真係を兼ねていたので『ちょっと頭を冷やそう』と各グループを一回り撮影して戻って来たが、遠目に見ても状況は変わっていなかった。心の中で『何か知恵を授かりたい』と祈ってはいたが、思いつかない無力感のままグループに戻ってきた。

 合流後しばらくしてふと、「は〜い、みんなストップ。ちょっと半分に分けてみようか」と、大人と子供に分けて交互に声を出してみた。だがやはり子供たちは声が小さい。「じゃ、今度はこうしてみよう」と大人と子供を混ぜて2組に分け、「どっちが先にやる?」と聞くと最年長の子が「はい」と手を上げた。「じゃあ、そっちからいくよ、せーの」と掛け声をかけた途端、「○○救済募金にご協力をお願いします!」とビックリするほど大きな声が出た。つられて次の組も大声を出し、あとは、その一生懸命さに通行人がほほ笑むくらいの声出しが続いて、無我夢中の楽しさの中、あっという間に終了時間になった。子供たちは「楽しかった〜、次もやりたい!」と笑顔を見せてくれた。

 親が頭の後ろでいくら大声を出しても、やる気のない子供には当て付けでしかない。そして相手がその気になるような知恵は、理屈ではなくその場で授かるしかないのだろう。あまりに鮮やかな展開に、そのことが深く心に残った出来事だった。

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