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愛はコミュニケーション

『願い叶え時』

ペンネーム : 鉢かつぎ

 台所で、カブの葉とそのつぼみを水に挿して、花が咲くのを心待ちにしていたが、全く咲く気配が無い。やっぱり無理かと諦めて、捨てようとつまみ上げると、なんと葉の茎から白いヒゲのような根が長く幾筋も伸びている。小さな陶器の底をたくましくはっていたのだ。

 知人の家庭菜園から我が家へやってきたカブの中で一つだけ、周囲の葉に守られている柔らかな花茎が小さなつぼみをつけていた。ひょっとしたら咲くかもしれないと、カブをおいしくいただいた後、水に挿していた。ところが期待もむなしく、つぼみはそのままドライフラワーになりかかっている。まさか、見えていないところがこんな事態になっていたとは……植物は生き物なのだと改めて気付いた。

 よくよく見れば、別の新種の野菜かと見まがう濃い緑色の葉。家に来た時より断然元気そうだ。おまけにカブの頭にくっついていた時と違い、わずか1週間で白ヒゲをたくわえ、いきいきと成長していた。生ゴミで捨てるには忍びない。しばらくの間、このパワフルな緑を観賞しようと思い直した。

 私の心境の変化を感じ取ったのかどうかは分からないが、その後さらに成長と変化を遂げて、葉と茎の付け根に新しいつぼみをいくつもつけたのだ。ワクワクしながら水を取り替えた甲斐あって、日に日に色付き、台所の流し育ちの菜の花が黄色に輝き出した。水道水と窓越しの陽の光だけで育ったつぼみはみごとに開き、咲き誇った。

 自分の思い込みで「やっぱり無理」などと見切りをつけず、今はまだ見えていない可能性を信じ続けよう。誰にでも、どんなことにも。意外なところにつぼみをつけて花を咲かせるかもしれません。

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