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愛はコミュニケーション

『楽しい顔で』

ペンネーム : 美猿

   今から約11年前、彼女のご主人は脳梗塞から体が不自由になった上に、失語症も患いました。それからの彼女はご主人の介護に明け暮れ、経済面をはじめ多くの問題にぶつかりましたが、持ち前のバイタリティーと心やさしい息子さんや娘さんの支えもあって、それらを一つ一つ乗り越えてきました。最近では、娘さんに留守を頼んで、地域のボランティア活動に参加できるようになりました。

 そんなある日、恩師から「たまにはショートステイに行ってもらって自分のための時間を作ったらいいよ」と助言されました。自分のことを思っての言葉と分かってはいるものの、今まで一生懸命に介護してきた彼女は、その言葉を聞いて無性に悲しくなり、家に着くなり大泣きしてしまったと言います。それは、ご主人を人様に預ける罪悪感というより、自分と娘でなくてはご主人のお世話はできないという思いがあったからでした。

 そのことを娘さんに話すと、娘さんは「お父さんだってお母さんが楽しい顔をしている方がうれしいと思うよ、ねえ、お父さん」と言い、ご主人の方を見ると、にっこりほほえんでいました。ご主人のやさしい表情と、思いきり泣いたおかげか、彼女は何かが吹っ切れたような気がしたとのことでした。

 ほどなくしてクラス会があり、娘さんの後押しもあって、彼女は「楽しもう!」と思って参加しました。そこでは、気の置けない仲間が全てを包み込んでくれ、時を忘れておしゃべりし、笑い、自分のための時間を大いに楽しむことができました。旧友とのつながりも深まり、たくさんの思い出もできました。そして何よりリフレッシュできた彼女は、以前にもまして楽しそうな顔で、ご主人との介護の日々を過ごしておられます。

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