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父の背中

ペンネーム : あっちょんぶりけ

 92歳の父は脳梗塞を患い入院中。見舞いに行った時、父は車椅子に座って、窓から外の景色を眺めながら「この景色は変わらないんだよなぁ」と、そっとつぶやいた。その独り言には「私が亡くなっても……」という言葉が、その前にあるような含みを感じた。

 まだ仕事をしている時の父の後ろ姿は、でっかくて頼もしくて、でもちょっとおっかなかった。決して弱音を吐くことの無い「おやじ」。そんな父の思いがけないつぶやきに、答える言葉が見つからなかった。

 その時ふと思った。果たして自分は父親として子供たちにどんな背中を見せているのだろうか、またどんなふうに見られているのだろうか。今の自分には自信がない。親の背中を越せない自分がここにいる。

 せめて、先に逝った母の分も含めて、父に寄り添うこの時間を大切にして、精いっぱい親孝行している自分の背中を、子供たちに見せていきたいと思う。

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